一途な御曹司に愛されすぎてます
「ところで仕事の方はどうなった?」

「え?」

 知らず知らずうつむいて黙り込んでいた私は、顔を上げた。

 地場産牛の赤ワイン煮を食べ終えた階上さんが私をじっとを見ている。

「企画が通ったと言っていたろう? 進行状況は?」

 いきなり仕事の話題になって戸惑ったけれど、自分の心の複雑な揺らぎから目を逸らせてちょうどいい。


「周りの人たちのおかげで順調に進んでいます。でも今、新メニューに関して悩んでいるんです」


「食の楽しさを提供したいと言っていたろう? このデザートがヒントになるかもしれない」


 彼の言葉を待っていたようなタイミングで運ばれてきたデザートを見て、私は目を丸くした。

「うわあ、綺麗!」


 一瞬、テーブルの上に水中花のオブジェを置かれたのかと思った。

 そう錯覚するのも無理ないくらいに美しいゼリーのデザート。

 水晶みたいに透明なドーム型ゼリーの中に、色鮮やかなピンク、紫、ブルー、オレンジの花々が爛漫と咲き乱れている。

 まるで、澄んだ泉の中にお花畑を閉じ込めたみたい!


「ゼリーケーキだ。寒天の中に様々な色素で色づけしたゼリー液を注入することによって、立体的な花模様をデザインするんだ。もちろん丸ごと食べられる」
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