一途な御曹司に愛されすぎてます
 壁に囲まれた中庭は、明るいベージュのタイルが綺麗に敷き詰められていた。

 シンメトリーに整えられた庭木や植え込みの構図は人工的で、古城ホテルのナチュラルガーデンとは違った趣がある。

 真っ白な二段噴水から零れ落ちる水の玉が光を弾いて、クリスタルの粒みたいだ。


 ロートアイアン製の優美なテーブルセットに腰掛け、涼やかな水音に耳を傾けているうちに、私は自分が今置かれている状況について考え始めていた。


 彼と想いが通じ合えたことはもちろんすごく嬉しい。

 けれど単純に喜んでばかりもいられないんだ。

 私と彼の交際が公になったら、彼の関係者から猛反発されるのは間違いない。


 古城ホテルで悠希さんと話していた男性の、不満気な表情が脳裏に蘇ってきて、これまでの浮かれ気分が一転して鉛のように重苦しくなった。

 階上グループの偉い人たちはもちろん、彼のご家族は私のことをどう思うだろう。

 なにしろ康平の家族の対応がトラウマになっているから、悪い方にばかり考えてしまう。

 あのときの再現ドラマみたいになったら、もう私、立ち直れないかも……。

「淳美」

 暗い思考に嵌っていたら、いきなり後ろから名前を呼ばれた。

 反射的に振り向いた私の全身に衝撃が走る。

「康平!?」

 そこにいたのは、なんと康平だった。
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