一途な御曹司に愛されすぎてます
 見間違いかと思って目を凝らしたけれど、やっぱり本人だ。

 グレーの七分袖ジャケットにベージュのチノパンという、ラフな格好の康平が目の前に立っている。


「なんでこんなところに?」

 私は目を丸くしながらそう口走っていた。

 そりゃ康平だって地元に住んでいるんだし、それなりにセレブなんだから、近場の高級ホテルで余暇を過ごすこともあるだろうけれど。

 でもあれ以来、近所でバッタリというようなこともなかったし、なんとなく、もう一生会うことはないだろうと思っていたのに。


「久しぶり。元気だったか?」

 康平は勧めてもいないのに私の向かいの椅子に座り込み、笑顔で話しかけてくる。

 やたらと軽い口調と態度に、私はちょっと引いてしまった。


 別れた相手と再会したときって、こんな感じが普通なの?

 もう過去のことと割り切って、笑顔で応じるのが大人のマナー?

 でも、久しぶりに会った友人みたいな態度で接してこられても、正直困る。
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