一途な御曹司に愛されすぎてます
「あなた、たしか一年前に康ちゃんが連れて来た子じゃないの! なんでここにいるのよ!?」


 コバルトブルーに染まった爪の先を向けられても、答える気力もない。

 すっかり気後れして沈黙する私とは正反対に、お姉さんたちは相変わらず能弁だ。


「私たちは昨夜からここに泊っていたけれど、まさかあなたも宿泊してたの? 嫌な偶然ね」


 そのセリフ、そっくりそのままお返ししたい……。

 心の中でそうつぶやく私の全身に、お母さんの無言の視線が突き刺さる。

 どうやら、高級リゾートホテルに似合わない私の地味な恰好を見て、呆れているようだ。

『これだから育ちの悪い子は』とでも言いたげな冷たい態度が、一年前とまったく同じで、たまらない気持ちになる。


 よりによって私が階上さんと結ばれた夜に、康平たち家族も同じホテルに泊まっていたなんて、なんの因果だろう?


 ただの偶然とは思えない奇妙な巡り合わせに、心の奥底に刻まれたトラウマがジクジクと疼き出す。
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