一途な御曹司に愛されすぎてます
 この人、私が手切れ金目当てに康平と会っていると思っているんだ。


 あまりの仕打ちに、いっそこの場で大暴れしてやろうかと思ったけれど、悠希さんの顔が脳裏をかすめて思いとどまった。

 騒ぎなんか起こしたら迷惑をかけることになる。

 周囲から反対されることも覚悟の上で私を想い続けてくれた彼に、これ以上の負担をかけられない。


「誤解です。私は康平さんとよりを戻すつもりはありません」


 火に油を注がないよう、できるだけ冷静な口調を心掛けたら、それが逆にお姉さんたちの癇に障ったようだ。


「まあ、なんて白々しい態度! そうやって金額を吊り上げるつもりね!?」

「いえ、本当に私は――」

「お黙んなさい! こんな高級リゾートホテルに泊まれる身分でもないくせに、コソコソと姿を現したのがなによりの証拠よ!」


 ヒステリックな声や、侮蔑の言葉が全身に突き刺さる。

 話をまったく聞いてもらえない私は、唇を噛んでひたすら悠希さんを思い、破裂しそうな心を懸命に抑えるしかなかった。

 いわれもない仕打ちを受ける悔しさと悲しさに、今にも涙が零れ落ちそうになった瞬間……。


「淳美」

 私の名を呼ぶ、涼やかな声がした。
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