一途な御曹司に愛されすぎてます

　呆けた顔で悠希さんを眺めていた康平が、恋人というセリフを聞いてピクリと反応した。

　とつぜん現れた謎のイケメンを食い入るように眺めていたお姉さんたちも、引っくり返った声を出す。


「え？　恋人？」

「し、失礼ですけれど、あなたはどちら様なの？」

「これは申し遅れました。私は階上リゾートグループの専務取締役を務めております階上 悠希です。この度は当ホテルをご利用いただきまして誠にありがとうございます」


　礼儀正しく自己紹介しながら名刺を差し出す悠希さんに、康平一家が仰天する。


「階上リゾートグループ!?　嘘でしょ!?」

「やだ、すごい！　大企業じゃないの！」


　両手で口元を覆ってキンキン声を出していたお姉さんたちが急に我に返って、私と悠希さんの顔を交互に見比べた。


『この庶民の娘が世界的大企業の専務の恋人？　まさか！』


　口には出さなくても、ふたりの顔にしっかりそう書いてある。

　でも悠希さんはまったく気にした様子もなく、笑顔で私に話しかけた。


「淳美、朝食はカフェテラスで海を眺めながら食べよう。まだ営業時間には早いが、キミのために特別に席を用意させるよ」