一途な御曹司に愛されすぎてます
「あら、ちょっと言いすぎたかしら？　でも本当に不釣り合いなんですから、ほかに言いようがありませんわ。分不相応な品をそうして自慢そうに見せびらかして、周りから失笑を買うのはそちらの勝手ですけれど」


　鉛のように重苦しい雰囲気を物ともせず、康平のお母さんはせせら笑っている。

　ありえない暴言を吐かれた私の心臓と頭は、痛いくらい激しく脈打っていた。

　体中が氷みたいに冷えているのに、頭の芯だけがどんどん熱くなっていく。

　悔しさとか、憤りとか、いろんな黒い感情がゴチャゴチャになって、膨れ上がって苦しくて、今にも泣きそうになったとき……不意に手に温もりを感じた。

　ハッと見上げると、悠希さんが私の手を握りながら、康平のお母さんを真っ直ぐ見つめ返している。

　その落ち着き払った姿を見たら、ガチガチに強張っていた私の体から、あっという間に力が抜けていった。


　……大丈夫。私の隣には彼がいる。


　そう自分に言い聞かせ、冷静になってよく見れば、康平のお母さんの頬が小刻みに痙攣している。

　喧嘩を売っている彼女の方が、私たちよりよほど余裕がないようだ。

　きっと今まで散々見くだしていた私が、自分たちでは太刀打ちできないほどのセレブに選ばれたことが、我慢ならないんだろう。


　屈辱感や妬み。そんなものが胸中に溢れかえっているはずだ。

　それはたぶん私がずっと康平一家に対して感じていた気持ちと、同類の感情なのだろう。

　卑屈になって、やり場のない気持ちをどうにかしようと吠えたてている。

　でもそんなの、無意味だ。

　だって相手の素晴らしさを認めることと、自分を卑下することは決してイコールじゃない。
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