一途な御曹司に愛されすぎてます
「ねぇ階上さん。こちらのお嬢さんは着物の『紗袷』も知らないような女性なんですよ? まったく、お育ちが知れるというものだわ」
鬼の首でも取ったような顔で、お母さんは口元に手を当てて笑った。
「そんな常識知らずな女性を選ぶなんて、大企業の専務さんともあろうお人が、いったいどういう基準で大事なお相手を決め――」
「『紗袷』? それはなんです? 私も存じ上げませんが」
気の抜けた炭酸水みたいにあっさりとした悠希さんの声が、ヒステリックな声を一瞬で断ち切った。
勢い付いていた康平のお母さんは出鼻をくじかれて、ポカンと口を開けたまま黙り込んでしまう。
「私は和装には疎いものでして。勉強不足でお恥ずかしいです」
そう言いながら悠希さんはまったく恥じている様子を見せず、堂々としている。
私は目を瞬かせて、そのあっけらかんとした顔を見上げた。
「常識を知らない私にぜひ教えていただきたいのですが、その『紗袷』とやらを知らない人間は、育ちが悪いんですか?」
鬼の首でも取ったような顔で、お母さんは口元に手を当てて笑った。
「そんな常識知らずな女性を選ぶなんて、大企業の専務さんともあろうお人が、いったいどういう基準で大事なお相手を決め――」
「『紗袷』? それはなんです? 私も存じ上げませんが」
気の抜けた炭酸水みたいにあっさりとした悠希さんの声が、ヒステリックな声を一瞬で断ち切った。
勢い付いていた康平のお母さんは出鼻をくじかれて、ポカンと口を開けたまま黙り込んでしまう。
「私は和装には疎いものでして。勉強不足でお恥ずかしいです」
そう言いながら悠希さんはまったく恥じている様子を見せず、堂々としている。
私は目を瞬かせて、そのあっけらかんとした顔を見上げた。
「常識を知らない私にぜひ教えていただきたいのですが、その『紗袷』とやらを知らない人間は、育ちが悪いんですか?」