一途な御曹司に愛されすぎてます
 この中で間違いなく一番育ちのいい悠希さんに飄々と問われて、みんな二の句も継げずに見つめるばかり。

 なにも答えられない面々を順に眺めた後で、彼は一点の曇りもない笑顔を私に向けた。


「私が伴侶を選ぶ基準は、私を理解して心を通わせてくれる女性かどうかだけです。価値観は人それぞれですからね」


 その言葉を聞いた瞬間、目が覚めたように目の前が明るくなった。

 迷いを知らない蒼天のような彼の笑顔と声が、私の中にずっと立ち込め続けていた薄雲を、あっという間に吹き払っていく。


『価値や基準は人それぞれ』

 そうだ。まったくその通りだ。

 そんな当たり前のこと、言われるまで気がつかなかったなんて……。


 自分に呆れると同時に肩から力が抜けて、なんだか笑いが込み上げてくる。

 苦笑いしながら青空を見上げる私の心は、嘘みたいに晴れやかだ。

 彼の言葉によって明かりを取り戻した自分の中に、ずっと悩んでいたことの答えがちゃんとあったから。
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