一途な御曹司に愛されすぎてます
「夜になって、ますます気温が下がったね。やっぱり本場の冬はすごいね」

「な? やっぱり南の方に旅行すりゃ良かったろ?」


 顔の下半分がマフラーで埋まってるから表情はよく見えないけれど、声にありありと不満が表れている。

 せっかく忙しい仕事の合間にとった休暇なのに、『寒い時期は温かい場所に行きたい』という自分の希望が叶えられなかったのが不服なんだろう。

 だから私はいつも通り、「うん、そうだね」と笑顔でうなずいた。


 彼は、自分の意見に反論されることを好まない。

 それは彼の境遇というか、立場に由来している性質なんだと思う。

 康平は私と同い年の若干二十六歳ながら、地元の大病院の理事という重職についている。

 医者だった祖父が開業した個人病院を、康平の父親が医療法人化して、介護事業や訪問看護ステーションまで着々と事業を展開して大成功させた。
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