一途な御曹司に愛されすぎてます
 せっかくの機会だからと新しく用意した七分袖のワンピースは、落ち着いたネイビーカラー。デコルテのリボンのフェミニンさが購入の決め手だった。

 サテンのクラッチバッグは極薄のピンク。靴も同系色の革パンプス。アクセサリーは淡水パールのネックレス。

 ヘアスタイルは、ハーフアップにして小分けに捻じってリボンのピンで留めた。
 私はあんまり器用じゃないからこれが限界。


 メイクは気合いが入りすぎると夜のレストランの照明下では白浮きする恐れがあるので、普段よりもちょっとだけツヤ感とキラ感を足す程度にしておいた。

 そうして身支度を整え、鏡に向かって顔を近づけたり遠ざけたり、姿見の前に立って何度も何度も自分の姿を真剣に確認しているうちに、飛ぶように時間が過ぎていく。


 もうすぐ、専務さんが私を迎えに来るんだ。あの専務さんが。

 約束の時間が近づくにつれて、胸のドキドキがどんどん高まっていった。

 ドキドキの内訳は緊張と不安がほとんどだけれど、正直に言えば少しばかりの高揚と期待も入り混じっている。

 だって……あんな素敵な男性とこんな素晴らしいホテルでディナーをご一緒する機会なんて、もう一生訪れないだろう。

 やっぱりどうしても意識しちゃうよ。こんな風にお洒落に気合いを入れるのも、康平と別れてから久しぶりだ。
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