一途な御曹司に愛されすぎてます
 黒いフォーマルベストと蝶ネクタイをつけたウェイターがテーブルに来て、専務さんとアイコンタクトして下がっていく。

 お料理はホテルを予約した際、コース料理をあらかじめ申し込んでいるので、メニューの内容がわからなくてマゴマゴする姿をさらさなくて済んでホッとした。

 ワインを選ぶときも、私の好みを聞いた専務さんが料理に合うワインを選んでくれたし、テイスティングの仕方も堂に入っていて、こういう席に慣れているのがよくわかる。


 こんな風にスマートに女性をリードできる男性って、やっぱり頼もしい。

 康平もわりとマナーはしっかりしていた方だと思うけれど、康平と専務さんの振る舞いには、なにか違う印象を感じた。

 なにが違うんだろう? 専務さんの方が動作が綺麗なのかな?


 考え込みながらしげしげと専務さんを見つめていたら、「なにか?」と不思議そうな顔をされてしまった。

「あ、いえ。なんでもありません」

 目の前の人と誰かを比べるような無粋な真似をしてしまって、密かに反省している私に彼が話しかけてきた。
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