一途な御曹司に愛されすぎてます

「矢島様。階上の里に続き、当ホテルのプレオープンにもお越しいただきまして誠にありがとうございます」


　丁寧に頭を下げられ、私も慌てて居住まいを正してお辞儀を返す。


「こちらこそ、階上の里で頂いた心尽くしのお料理に感謝しています」


　ずっと言いたかったことをやっと伝えると、専務さんの表情がパッと明るくなった。


「あのときのことを覚えていてくださったのですか!?」

「はい。もちろん」


　大きくうなずく私に、彼は一気に相好を崩した。

　それはとても自然な表情で、『へえ、大企業の専務さんもやっぱり普通の青年なんだな』と思えるような、親しみを感じる笑顔だった。


「今回の来客名簿を確認して矢島様のお名前を見つけたとき、どれほど嬉しかったことか！　プレオープンの日が本当に待ち遠しかった！」


　こんなとびきりの笑顔で、本当に嬉しそうな声でそんなことを言われてドキンと胸がざわつく。