一途な御曹司に愛されすぎてます
 そのセリフ、どう解釈すればいいんだろう?

 単純に『お客様と再会できて嬉しい』って意味だとは思う。でも彼の態度から滲み出る空気は、そういった一般的なものとはちょっと違うような気がするのだけれど……。


「失礼ですけど、専務さんってお幾つなんですか?」


 彼の言葉の真意を無意識に探ろうとしている自分に気がついて、あえて私は話題を変えた。

 なんだか変に深読みしているみたいで恥ずかしい。私ったらなにを期待してるんだか。


「私、ずっと専務さんはご年配の方だと思っていました。だって大企業の重職に就かれている方がこんなに若いなんて」


「若いといっても今年で二十九ですよ。祖父が階上グループの会長で、父が社長なので、その流れで長男である私も現場の下積みを経てから専務に就任しました」


 そうか。現場でちゃんと修業を積んだから、スタッフとしての身のこなしが堂に入っているんだ。

 上の人ほど現場を知らないケースが多いのに、立派だな。
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