一途な御曹司に愛されすぎてます
「これ、とっても美味しいですね!」

「ありがとうございます」


 お世辞ではない私の感想に、専務さんも嬉しそうにお礼を言ってから一切れ口に含んで、「うん」と満足そうにうなずく。

 前菜を食べ終えて、しみじみとその美味しさに感心したところで、私はそろそろ本題に移ることにした。

 次のお料理がくる前に、一番肝心なことを確認しておきたい。


「あの、専務さん。教えていただけるんでしたよね?」


 少し身を乗り出すようにして問いかける私に、専務さんが小首を傾げて聞き返す。


「なにをでしょうか?」

「お食事をご一緒したら、私を特別待遇する本当の理由を教えてくださる約束です」


 ちゃんと理由を聞かないことには、とてもじゃないけど落ち着いてあの部屋には泊まれない。

 私には分不相応すぎて、なんだか犯罪を犯しているような気になっちゃうんだもの。
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