一途な御曹司に愛されすぎてます
 それまで機嫌の良さそうだった専務さんの口調が、急にぶっきら棒になった。

 特に『別れた元彼』という部分の言い方がひどく冷たく感じて、私は思わず沈黙する。

 そしたら、そんな私の様子に気づいた専務さんが気まずそうな顔で言い直した。


「レジャーとしての派手さに欠けるから、もっと無難な企画に練り直せと散々忠告されたんです。でもそれでは私の目指す理想と違ってしまうので、なんとか祖父や父を説得して強引に推し進めました」


 そんな事情とは知らなかった。

 だって土地開発も絡んだ鳴り物入りのリゾートだったから、てっきり階上グループの目玉扱いされているとばかり。

 実際は味方してくれる人もなく孤軍奮闘していたなんて。


「祖父や父の代からグループを支えてきた人たちにとっては、私は『悠希お坊ちゃま』でしかない。苦労知らずの若造は机上の空論ばかりで困ると、陰でずいぶん言われていたんです」


 苦笑いしながら軽い口調で言っているけれど、ずいぶんつらかったろう。

 だって、何年もかけて現場の業務技術をコツコツ習得するような真面目な人だもの。
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