一途な御曹司に愛されすぎてます
 ただの事務って、なに?
 康平のお母さんにそう言われて反発したのに、自分で同じことを言ってるなんて。


 思えば私は、なんのためにあんなに頑張ったんだろう?

 人に誇れる実績がほしかった? 誰かに対して胸を張りたかった?

 誰かって、誰に?

 ……康平の家族?


 無言のまま考え込んでいる私を、専務さんが訝し気に見ている。

 でも一度自分の気持ちに向き合い始めると、そこから目を逸らせなくなった。


 私、『高齢者や、子どもたちがいるご家庭を手助けしたい』とかなんとか熱弁を振るっておきながら、実際のところは康平たちを見返したいだけだったんだ。

 こんな後ろ暗い動機でずっと仕事をしたことに、自分でも気づいていなかったなんて……。
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