キミのせいだよ( 幼馴染じゃいられない )
「あっ、あの!わたし、1-Aの上村陽咲って言います……!氷室先輩、また見に来ても、良いですか……?」
昨日、深夜にわざわざインターネットで調べ上げたんだ。
清楚!控えめ!上目遣い意識!
氷室先輩の前では絶対に絶対に、上記の3ポイントモテテクを厳守するんだ!
「うん、もちろんだよ!陽咲ちゃん。」
効果は……もちろん覿面かな!?
だと、嬉しいなあ。
会釈をして別れた後、遠ざかる先輩の影がボヤけて、軈て見えなくなるまでその一点だけを見つめていた。
家に帰るまでの足取りも、何故かいつもと比べて自然に進んだ。
『陽咲ちゃん』
……よしっ、このペットボトルは、一生飲まずに家宝にする!
そう決意して、この日は何度も何度も先輩の声や紡いだ言葉、一つ一つの余韻を只管に刻んだ。