君とスマホと僕と
時は少し遡り昨日

僕は駅前で待ち合わせをしていた。相手は女子のはずだ。会ったことが無いので実際どうなのかは知らない。最近よくあることなのではないだろうか。Twitterやネットゲームなどで知り合った人と現実世界で交流する。オフ会と言ったか?そんなところだ。
勿論相手が性別や年齢を偽ると言った話はよく耳にするし、実際僕だってそうだ。こうやってノコノコ誘いに乗って騙されたって文句は言えないだろう。だが僕は好奇心に勝てなかった。騙されたとしてもそれはそれで面白い。そうたかをくくっている。
悶々と思考を広げているとブブとスマホが鳴った。画面を確認すると待ち合わせの彼女からだった。『今着きました。』と。続けざまに
『どこに居ますか?どんな格好をされてますか?』
僕は一度自分の服装を確認してからメッセージを返す。
『駅前広場中央の木の下です。白のシャツに黒のジャケット、同色のズボンを穿いてます。』
僕の返信にすぐさま携帯が鳴る。
『見つけました!』
「あの」
その声に僕は反射的に顔を上げた。一瞬で用意しておいた言葉が吹き飛んだ。
言葉を失った僕に彼女、否。彼は爽やかに笑った。
「驚いた?私、いや、俺男なんだ。」
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