君とスマホと僕と
僕たちは広場のベンチに並んで腰かけていた。
隣に座る彼は白のワイシャツに黒のパーカー、紺色のズボンを穿いている。女子にも居そうな格好だが、どう見ても男子だ。
まさか本当に騙されたなんて。そう思いつつも僕は自分がそれほど落胆していないのに気がついた。なぜだろうか。
なにも言わない僕に彼は笑いながら言う。
「ごめんね、遊宇君。今まで騙してて。」
遊宇というのは僕のアカウント名だ。
僕は意識して低い声を出す。
「別にいいよ。まぁ、少し驚いたけど。」
実際は少しどころではない。
「俺のことは陵って呼んでよ。」
「…分かった」
本名なのか偽名なのか分からなかったがアカウント名で呼ぶのは憚られるので承諾しておく。
「それより、遊宇君って意外と背低いんだね。女子みたい。」
最後の一言にドキッとする。しかし彼はただそう思っただけといった感じだったので、僕は平然と返す。
「好きで背低い訳じゃねぇよ。」
「まぁね。ところで遊宇君はいつも仲良くなった人と会ってんの?」
「や、今回は近場だからって理由で普段会ってないよ。」
ふーんと陵。
「俺が言うのもなんだけど年齢とか偽ってる人とかいるから気を付けた方がいいよ。」
「…そっくりそのままお前に返すよ。その言葉。」
呆れた口調で僕が言うと陵はケタケタ笑って「そうだね。」と言った。
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