お楽しみが待ってる


…本当に…わけわからないんだけど?


ん。だろうね…。
俺、先月まで田舎に帰ってたんだ。


あの時…親父が倒れてね。


…え?


最初は、手術すれば治るんだろうと
思ってたんだけどね。


医者の話じゃ…後遺症が残るって
話だった。


母親に…帰って来てくれって泣かれてね。

親父も小さな会社やってたから…。

どう考えても、俺が帰るしかないと思った。


それなら!
…どうして、言ってくれなかったのよ!?


もう、戻って来れないと…思ってたからだよ。


…だからって…。


じゃあ…もし話してたら…
アキは、全部捨てて俺について来た?


あたしを、見つめる目が痛い…。


アキが、会社頑張ってたのを
一番知ってたのは俺だよね?

俺についてくれば…
大切な会社を…。
大事な社員を…見捨てることになる。


そんなこと、させられない。
別れるしかないと…思った。


…なる…ほどね…。
驚くほど、腑に落ちた。

あたしたち、うまくいってたのに。
あんな急に、別れたいって言われて…
納得できないままだった。



もし、話してくれていたら…
あたしは、ついていけただろうか…。

…きっとあたしは…



洋平の顔を見ると、あたしをじっと
見つめている。


ごめん…洋平。
あたし、何も知らないまま…
ずっと恨んでた。


…いいんだ。
それは、俺にとって、最後の望みでも…
あったからね。


え?

ひどい男だと、思われたとしても。
俺を忘れないでいてくれたら…ってね。


もし。
万が一、戻ってこれることになったら。

死ぬほど謝って、許してもらうつもりで
いたんだ…。







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