イジワル御曹司ととろ甘同居はじめます
家に帰るため駅の方へと歩き出した。そして最初の信号にさしかかったとき声をかけられた。

「大沢」

すぐに振り向くとそこにいたのはさっきまで会議室で監視するように私を見ていた七瀬部長だった。

「なんでしょうか?」

「帰るぞ」

帰るぞ?それって一緒に帰るって事?

「一人で帰れますので結構です」

「同じ家に帰るのに何が一人で帰るだ。つべこべ言わずに行くぞ」

え?え~?

部長は私の手を取るとなぜか家とは逆方向を歩き出した。

っていうかこの状況まずくない?会社のすぐ近くだし誰かに見られたら大事だ。

「ど、どこに行くんですか?駅はあっちですよ」

小声で部長にしか聞こえない声で尋ねつつ周囲を警戒する。

「今から飯食いに行ってから帰るんだよ。その前に車」

そういえば部長は車で出勤してるんだっけ。うちの会社は基本、通勤手段は公共機関のみ。
でも部長は御曹司だから容認されているのだろう。でも車の止めている場所は会社から少し離れていた。

一応気にはしているんだ。

「乗って」と言われて後部座席のドアを開けようとするとなぜか助手席に座れと指さす。

仕方なく助手席に乗るも相変わらず厳しい表情。

こんな顔をするぐらいなら一人で帰ればいいのにと思うのだけれど、何を言っても冷たい言葉が返ってきそうで言葉を飲む込む。
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