始まりは些細な選択から
体験入学
.




中学最後の夏休み。


私はクーラーの効いた塾の隅っこで黙々と模試テストを解いていた。


夏休みの予定は毎日が勉強で詰まっていた。

以前までの予定は部活のバスケで予定表が埋まっていたが夏休み直前、引退を賭けた
最後の大会で惜しくも初戦敗退し、受験勉強に時間を費やしていた。



そんな日々に少しずつ入っていた予定が高校見学だった。




「なぁ涼音ー、次の高校見学どこにする?」


椅子の背もたれを前にしてピラリ、と
高校名簿を見せつけるのは幼馴染である成田陵。

高校見学、その言葉に反応して残り時間数十分残っているタイマーを止めた。




「____私が今制限時間つけてテストしてんの分かんないかなぁ、?!」

「お前は保険に保険をかけすぎてのそのテストだろーが!!
頭いい方なんだし別にもう勉強しなくてよくね?」

「万が一テンパって1問も解けなかったらどうするのよ!
ここはゆっくり時間をかけて色んな高校のテストをして慣れておかないと.....」


そういうと陵は小さくいちゃもんを付け始めたが聞こえないフリして
タイマーに手を伸ばしかけた時、



「そーいえばお前、あの高校忘れてんだろ」


手はタイマーに触れるか触れないかのところで止まった。


「.....別に忘れてなんかないよ、あの見学って確か8月最後くらいでしょ。」

「でもあの高校かなり人気だからさ~。
予約とか確かいるはずだったし、」


" あの高校 "というのは私たち2人の第二希望までには入っていた高校という。

なにせ校舎は古ぼけた校舎から真新しいほどに綺麗になり、制服は可愛い(しかもそこそこミニスカ)、そしてなにより___




「あそこダンス部強いじゃん?俺絶対行きたいしな。」


陵は現在進行形でダンスを習っているのだ。

幼稚園、までとはいかないが小学1、2年生ほどから始めたらしくその実力は確かだ。


私は陵から(無理やり)ダンスを教わっていたので
そこそこ踊れるくらいだ。

()の中で無理やりって書いてあるが別にダンスが嫌いな訳じゃない。
むしろ好きな音楽で、好きな様にリズムに合わせてノれるダンスは大好きな方だ。


「分かったから、でもそれの予約開始ってあと3日後くらいでしょ?
分かったから、とりあえず今は勉強させて。」

「じゃあ俺たぶん忘れるだろうから忘れたら俺の分も予約しといて」

「アンタが忘れるんかいっ」



スパーンと教科書で頭を打ちタイマーをスタートさせた。



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