ファインダー越しの君へ
親友のことが大好きで、大嫌いになって、それでも好きだった。

何となく仲直りをしそびれたまま、別々の高校になってしまった。


(何で今、思い出すんだろう。終わったことなのに・・・・・・)


それから、言葉を慎重に選ぶクセがついた。



嘘は言わない。


でも本当の思いを伝えられているかといったら、よく、わからない。

当たり障りのない意見、空気を読む。笑う。笑顔でいる。

そう、これ以上嫌われたくない。 

そんな作った自分であっても、友達としゃべるのは楽しかったし、親友だっている。

少しうつむきながら塁は思う。


(まったく本音を出せてないわけじゃないと思うけど。笑えてないのかな)


(こんな自分、嫌いだ)


パシャ、パシャ。

その音は続いた。



窓の外を見ながら、塁は自分が涙を流していることに気づかなかった。

そんな塁を見ながら圭は声をかけることもなく、ゆっくりとシャッターを切った。
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