ファインダー越しの君へ
4 欲求
塁がもっと先輩のことを知りたい、と思うようになるまでに時間はかからなかった。
週に一回、化学室での撮影会。
グラウンドを一緒に歩きながらの撮影のこともあった。
シャッター音の間に、他愛無いおしゃべり。
塁はそれを心から楽しんでいる自分に気づいていた。
シャッター音をききながら、先輩には私がどう見えているのかな、何て思う。
真剣な表情。
レンズ一枚隔てた向こうと、こちら側。
先輩には真剣に取り組める写真、というものがあるのに、私には何もない。
高校に入って、入った演劇部は廃部寸前。気が向いたときに一人、発声練習をするだけだった。
一人では舞台に上がるチャンスはないのだ。
そう思うと自分には何もない。空っぽの人間のように思えてきた。
ふと思いついて聞く。
「先輩は、なんで写真を始めたんですか」
「んー」
珍しく手を止めて圭は視線を天井に向けた。
目線をあげるのが、考え事するときの癖のようだ。
そんな小さなことを知るのでもなぜか嬉しくなる自分がいた。
週に一回、化学室での撮影会。
グラウンドを一緒に歩きながらの撮影のこともあった。
シャッター音の間に、他愛無いおしゃべり。
塁はそれを心から楽しんでいる自分に気づいていた。
シャッター音をききながら、先輩には私がどう見えているのかな、何て思う。
真剣な表情。
レンズ一枚隔てた向こうと、こちら側。
先輩には真剣に取り組める写真、というものがあるのに、私には何もない。
高校に入って、入った演劇部は廃部寸前。気が向いたときに一人、発声練習をするだけだった。
一人では舞台に上がるチャンスはないのだ。
そう思うと自分には何もない。空っぽの人間のように思えてきた。
ふと思いついて聞く。
「先輩は、なんで写真を始めたんですか」
「んー」
珍しく手を止めて圭は視線を天井に向けた。
目線をあげるのが、考え事するときの癖のようだ。
そんな小さなことを知るのでもなぜか嬉しくなる自分がいた。