ファインダー越しの君へ
5 写真
その日、塁は約束の時間よりも早く化学室に来た。
夏休みも後半に差しかかり、残っている宿題を片付けようと思ったのだ。
数式と格闘していると、がらがらと戸が開いて圭が入ってきた。
「よっ。お疲れさん。早いな」
少し日に焼けた肌が、先輩のかっこよさを増しているな、と塁は思った。
そのことはおくびにも出さず、答える。
「宿題やろうと思って」
「おーえらいえらい。わかんないことあったら聞けよー」
ふと気になったことを聞いてみる。
「先輩は受験生でしょう。勉強はいいんですか」
ははっ、と笑って圭はカメラの準備をし始めた。
「ご心配ありがとーさん。でも俺、成績いいからね。心配には及びませんよ」
茶化して答える圭に、塁は笑った。
心の先輩メモにそっと書き加える。成績○(まる)。
「笑うようになったな」
「え?」
「え、じゃねーよ。ちゃんと自然に笑えるようになったな、て思ってさ」
塁ははっと口元を隠し、うつむく。
「さぁ撮るぞ」
(どうしよう。嬉しい。)
塁は心が沸き立つのを感じた。
先輩といるだけで、自分のことまで好きになれそうだった。
夏休みも後半に差しかかり、残っている宿題を片付けようと思ったのだ。
数式と格闘していると、がらがらと戸が開いて圭が入ってきた。
「よっ。お疲れさん。早いな」
少し日に焼けた肌が、先輩のかっこよさを増しているな、と塁は思った。
そのことはおくびにも出さず、答える。
「宿題やろうと思って」
「おーえらいえらい。わかんないことあったら聞けよー」
ふと気になったことを聞いてみる。
「先輩は受験生でしょう。勉強はいいんですか」
ははっ、と笑って圭はカメラの準備をし始めた。
「ご心配ありがとーさん。でも俺、成績いいからね。心配には及びませんよ」
茶化して答える圭に、塁は笑った。
心の先輩メモにそっと書き加える。成績○(まる)。
「笑うようになったな」
「え?」
「え、じゃねーよ。ちゃんと自然に笑えるようになったな、て思ってさ」
塁ははっと口元を隠し、うつむく。
「さぁ撮るぞ」
(どうしよう。嬉しい。)
塁は心が沸き立つのを感じた。
先輩といるだけで、自分のことまで好きになれそうだった。