ファインダー越しの君へ
「いや、そうじゃなくて、昔の写真だから見られたくなかったんだ」


そう言いながら、写真を見つめるその目は優しげで、写真の彼女は先輩にとって大切な人だとわかった。

塁がじっと見つめると、圭は頭をかきながらうつむいて、ぼそりと言った。


「人物を撮るのは久々なんだよ」


毎週撮られている塁は、言葉の真意がよくわからないまま、うなづいた。

圭は頭を上げて続けた。


「俺は、元々風景をメインに撮ってるんだ。」


そして、塁の目を見て言った。


「塁を、撮りたいと思ったんだ。だから今お前を撮ってるんだ」


何を、言われているんだろう。

塁は自分の頬が赤くなるのを感じた。


(何で)


(何で先輩は私のことを知ったの?私を撮ろうと思ったの?)


一年と三年で学年が違う。部活動のようなつながりもない。

急に教室に現れて私をこの化学室へ連れてきた先輩。

聞きたいのに、言葉にならなかった。

それ以上に塁の心には別の感情があふれていた。


(好き)



(私、先輩のことが好きだ)
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