ファインダー越しの君へ
無言の化学室に、運動場のざわめきが響く。


「せんぱ・・・」


「あのさ、・・・」


同時に言いかけて、再び無言になる。


「あの、どうぞ、お先に」


「いや、ああ、うん。次回のことなんだけど・・・・・・」


次回の打ち合わせと、何でもない世間話が続いた後、撮影会は解散となった。

カメラの片づけをする圭を残して、いつものように先に帰ろうとした塁を圭が呼び止める。


「なぁ、さっき、何だったの。言いかけてただろ」


塁の心臓がどきんと跳ね上がる。


「いえ、何でもないです」


塁は思わず告白しそうなったとは口が裂けても言えないと思った。


「そうか。あのさ、このあと時間ある?駅まで一緒に・・・・帰らないか」


「は、はい!」


圭は丁寧にカメラをカバンにおさめていく。

そして塁に向き直ると笑って言った。


「帰るぞ」


その笑顔を見て、塁は自分の胸がきゅーっと締め付けられるのを感じた。
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