ファインダー越しの君へ
(先輩)


(先輩のこと好きになってしまいました。どうすればいいですか。私はただのモデルなのに)


(先輩が私を見てくれるのは、写真のためなのに。私のこと、もっと知って欲しいと思うのは贅沢ですか)


2人は校舎の影にそって歩いた。

学校の敷地にそって植えられた街路樹から、うるさいほどの蝉の声が響く。

夏休み前とは違う暑さに、塁は時間の流れを感じた。

もうすぐ夏休みが終わる。


(先輩と会える時間が終わっちゃう・・・・・・)


「なぁ、部活、やんないの」


「え?」


「演劇部だろ」


「何でそれを」


塁より2、3歩前を歩きながら圭は続ける。


「おれさー、春から塁のこと知ってたんだよね」


「第二校舎の前でさ、発声練習してただろ。顧問の先生に誰なのか聞いてさ、それで夏休み前に押しかけたわけ」


「そう、ですか」


(そうだったんだ。そんな前から私のこと、知っててくれたんだ)


「すごくかっこいいなって思って」


「ふっ」


塁が笑い声をもらす。
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