ファインダー越しの君へ
ぱんっ。


先輩が美映の頬を打った。

頬に手を置きわなわなと震える美映。


「いいかげんにしろ」


ぱんぱんと新聞についたほこりをはらい、机に置く。


「馬鹿にしてるのか。河彩さんには俺が頼んだんだ」


「でも、だって。人は撮らないって・・・・・・」


泣きそうになりながら美映は言う。

だって、だって、と繰り返す。


「帰れ」


「お兄ちゃんっ」


「帰れ。河彩さんには時間を使ってきてもらってるんだ。これ以上言わすな」


はい、とつぶやき美映は教室から出て行った。


塁は、無言の空間がいたたまれなかった。

何か言葉を発していいものかわからない。


「悪い。あれ、妹なんだ」


「あ、はい」


(それはわかりましたけれど)


それ以上に塁の頭の中には疑問がぐるぐるとうずまいていた。


ヒカリって誰?


人を撮らないってどういうこと?
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