ファインダー越しの君へ
「塁?」


「いいんですか?先輩、私よりモデルにふさわしい人がいるんじゃ・・・・・・」


最後は消え入りそうな声になってしまった。

圭はふーっとため息をつくと、腰に手をあてて言った。


「いいんだよ。今はお前のことを撮ることしか興味がない」



淡々と言われた言葉に、塁は驚きと喜びがごちゃまぜな気持ちになった。


(そんなことサラッと言えちゃうなんて、ズルイ)


その時、ガラガラッと教室のドアが開く。


「ちょっと、塁、それ以上お兄ちゃんに近づかないでよね!」


「うるせーよ。帰れ」


「帰らないもん。二人がなにするかわからないでしょ」


あれから撮影には宇佐見妹、美映が立ち合うようになったのだ。


(二人きりの時間だったのに・・・・・・)


圭は気にするなと言ったが、圭自身もペースを乱されているようだった。


そうしてあわただしく秋、そして冬が過ぎていった。
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