ファインダー越しの君へ
圭はもう一度念を押すように言ってから、カメラを構えなおした。


「そのままで、目線、自由に。力を抜いて」


(力を抜いて)


塁は心の中で反芻する。

むっとした熱気を含んだ風が窓から入ってきた。


(夏だなぁ。夏らしい風)


ふぅと小さく深呼吸して、赴くままに視線を動かした。

ぱしゃぱしゃとシャッター音が響く。

遠くに運動部の生徒達の声が聞こえる。


(先輩からはどう見えているんだろう、私のこと。作り笑い、誰も気づかなかったのに・・・・・・)




―塁の言うことはいつも自分勝手だよ。私、ついていけない。




中学の頃友達とささいなことで喧嘩をし、本音を言うのが怖くなってしまったのだ。

キュッと心が痛んだ。
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