アナスタシア　シンデレラ外伝
　そうする間にエラの周りに若い男が集まっていることにアナスタシアは気づいた。当然だろう。これだけ美しい娘だ。人が集まらないわけがない。その中の勇気ある一人がエラに話しかける。
「私も仲間に入れてもらえますか？」
「ええ。喜んで。」
　男は自己紹介を始めた。と、その自己紹介が終わらない間に他の男が割り込んできた。あとはもう雪崩のごとき自己紹介合戦だ。アナスタシアと青年は雪崩に巻き込まれないように少し離れたところに避難する。

「アナスタシア。こんなところで会えるなんて。どうなったのか、心配してたんだ。」
「？」
「覚えてないかな。僕はフレデリク。」
「フレデリク？」
名乗られても、彼女に貴族の知り合いなどいるはずもない。人違いだ。
「まぁ、仕方ないか。」
青年は首を振った。
「ごめんなさい。でも人違いだと思う。」
「何年か前、市場で会ったよ。アーベルと二人で君を助けた。君のお父さんが亡くなった日だ。アナスタシア。君だろ？」
　アナスタシアは驚いた。あの日の少年は、もっと小さくて、なんというか、子供だったような気がする。今目の前にいる青年は、細身だが背は大人と変わらない。凛々しい顔つきは既に男性と言えた。
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