アナスタシア シンデレラ外伝
 市場まで戻ると、顔なじみの数人が彼女を心配して店を畳まずに待っていた。
「あぁ良かった。間に合ったのかい。怖かったろう。」
「クラウス達も本当は悪い子らじゃないんだよ。許してやっとくれ。な。」
「あんたも、いつまでも子供じゃないんだから、町外れを1人で歩くんじゃないよ。」

 いろんな人が口々にアナスタシアに声をかけてくれたけれど、アナスタシアは自分がされた事も、市場の人が言っている事もよく解らなかった。ただひとつだけ、彼女にも理解できたのは、自分の身は自分で守れと言われたことだ。
みなアナスタシアを気の毒がったが、何をしてくれたわけではなかった。彼女の感じた恐怖や悲しみは誰にも理解されない。諦めるしかないのだ。

 アナスタシアが市場の人達に礼を言い、家へ帰ろうとすると、人々は今度は憲兵へ向かって苦情を申し立て始めた。役人が市場を管理するようになってから、治安が悪化していて困ると、みな口々に言い募る。

「ジルベールさんが仕切ってくれてた時は、こんなことなかったよ。」
「あんたら役人は場所代を取り立てるだけで、何もしてくれないじゃないか。その上ジルベールさんたちを閉め出しちまった。」
憲兵はそれを自分に言われても、と困り果てていた。
「私達も町の治安を維持するために、ですね、、日々、ですね、、えっと」
困り顔の憲兵を囲んで市場に人だかりが出来始めていた。
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