【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
嬉しい報告は幸せと共に
まだまだ残暑は厳しいけれど、カレンダーは今日から九月になった。
これから少しずつでもこの暑さが和らいでいくと思うと、嬉しくてしょうがない。
それは、私が夏より冬派だからだ。
冬の方が食欲があるせいか食べ物が美味しい気がするし、服だって夏より着られてオシャレができる。
それになんといっても、じゃこの温かい身体に寄り添ってだらだらするのが大好きなのだ。
午前診療の土曜日。
今日は珍しく朝早くから来院する患者さんが多く、後半は落ち着いている。
普段の土曜日なら、病院を閉める一時近くでもまだ待っている患者さんがいるのがいつものことだ。
だけど今日は、十二時半を回った今の時間、待合室に人の姿はない。
「なんか今日、土曜日じゃなみたいだね」
待合室の床をモップで拭きながら、受付にいるムロくんに話しかける。
書き物をしていたムロくんはバッと顔を上げ、「あ!」と何か思い出したようだ。
「今日、ここの町内会のお祭りがあるってさっき言ってた! 松田さんが」
「ああ、土佐犬の松田さん」
「そうそう、土佐犬ジョニーな」
来院する家族のお名前は、連れてくる動物とセットで覚えている。
動物を覚えてから、この人が飼い主の〇〇さん、と、まずは動物を覚えてしまう感じだ。
「そっかー、お祭りか〜。じゃあ、その地元行事でこの辺りの人は忙しいのかもね?」
そんな話をしていた時だった。
入り口の自動ドアが開き、来院を知らせるベルが鳴った。