【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「こんにちはー!」
聞き覚えのある弾んだ声。
モップの柄を握り締めたまま、固まってしまう。
入ってきたその顔を目に、瞬時にその足元に視線を投げていた。
ピンヒールのその横には、真っ白で小さなチワワがピンク色のリードに繋がれている。
「蓮先生、いらっしゃる? ちょっと耳を診てもらいたくて。聞こえが悪いのか、呼んでもこないのよ」
何食わぬ顔をして来て、一体何を考えているのだろう。
ふつふつと湧き起こる感情に、手先が震えてくる。
あの日、冷たいコンクリートの鉄格子越しに見た、これから迫り来る運命をまだ知らないあの子の姿を思い出していた。
「それは……聞こえが悪いんじゃないと思います。あなたが、愛情を持って接してないから、呼んでも来ないんですよ」
六渡寺さんとムロくんの目が私を向く。
「はぁ?」と紅色に塗り上げられた唇が不機嫌に開いた。
「あなた、ただのお手伝いでしょ? 何様なの?」
「その言葉、そっくりそのままお返しします。あなたこそ、何様なんですか? 動物の命、なんだと思ってんですか?」
「なんなのよ、あなた!」