【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
そういえばあの獣医師、じゃこのことを預かったくせにじゃこの名前も聞いてこなかった。
というか、問診票的なものも書かなかった。
どうなってるんだ!
「で……えーと、お姉さん――」
「遠野です」
「遠野さん、すみません、名前もお聞きしてなかったですもんね。自分、室屋(むろや)と言います。ここで動物看護師とトリマーしてます」
室屋と名乗った彼は、人懐っこい笑みを浮かべて自己紹介してくれる。
昨日も思ったけど、人当たりのいい社交的なタイプの人だ。
「じゃこちゃんの様子を見にきた感じっすか?」
「あ、はい。今日、手術をしてもらえると約束していたので」
「なるほど。じゃあ、どうぞ、こっちから一緒に」
室屋さんは連れていた犬たちを引きながら、私を一緒に中へと通してくれる。
中に入ると待合室で、「ちょっとお待ちくださいね」と言い、犬を奥へと連れていきながら「蓮さーん」と声を上げた。