【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


「急げっ、急げ!」


独り言をブツブツ呟きながら、バッグから取り出したキーケースで玄関の扉を解錠する。

仕事を終え、寄り道なしの一直線で一人暮らしのアパートへと帰宅した。

最近はスーパーへの買い物も後回しで、まずは家に帰るようにしているのだ。

カコッと音がして鍵が開くと、「ただいまー!」と声をかけて玄関の扉を開く。


「……あれ。じゃこー?」


いつも私を待っていてくれる愛くるしい姿が、そこにはない。

毎日、仕事を終えて帰ってくると、私が鍵を開ける音で玄関に出迎えに来てくれる愛猫の〝じゃこ〟。

ドアを開けた時には、玄関を上がった私のスリッパの横に、ちょこんと座って待っているのがいつものことだ。


「……じゃこ?」


昨日はドアを開けるとちょうど奥の部屋から歩いてくる途中で、それでもどうしたのだろう?と少し引っかかった。

< 3 / 112 >

この作品をシェア

pagetop