【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「あの、その、それは……」
「まだ何かあるのか」
スパッと躊躇いのない言葉を投げかけられて、「えと……」と詰まってしまう。
今の私に、異論を唱えられるはずもなかった。
先立つ物があれば、こんな話をされる隙もなく、お世話になりましたと治療代をサクッと払って、じゃこと家に戻れたのだ。
全部、自分の身から出た錆。
じゃこを診てもらって、嫌ですとはやっぱり言えない。
「……わかり、ました。今の仕事と両立という形になりますが、やらせて、いただきます」
やっと話に乗った私を見下ろす先生の表情が、勝ち誇ったように微かに笑みを浮かべた。
薄い唇の口角が、満足気にひゅっと上がる。
不覚にもその端麗な微笑にどきりと鼓動が反応していた。