【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


「なっ……なんですか、それ!」


私の出した声に驚いて、触っていたアメリカンショートの子が手からスルリと逃げ出していく。

避難するようにまた先生の膝の上へと行ってしまった。


「ほら、こうやって」


自分の元へ再び戻ってきた子の喉を、今私にやっていたのと同じように撫でてみせる。

先生の指先から何かが出ているのかと思ってしまうほど簡単に、ゴロゴロという音が聞こえたきた。


「なっ、鳴らすわけありません!」


抗議の文句を返しながらも、熱を持った顔面は温度を下げていかない。


「ちょっと、お手洗いに行ってきます!」


逃げるようにして先生に背を向け、トイレへと駆け込んだ。


なに、なに、なに⁈

一体、どういうつもりであんなことしたのだろう。

そう思うと、今になってから心臓が忙しなく音を立て始める。

くすぐられた顎を押さえて見た鏡の中の自分の顔は、予想通り紅潮していた。

初対面の印象から、先生はふざけて人をからかうような人とは思えないタイプだ。

それなのに、いきなりあんなこと……。

個室の中でクールダウンをし、気持ちを鎮めて戻ると、先生は入り口近くでスタッフ、エリアマネージャーと話をしていた。


「先生、すみません、支払いを……」


バッグから財布を出そうと手を突っ込むと、「もう済んでる」と言われてしまう。


「え、あ、すみません、ありがとうございます……」

「では、また来月伺います。行くぞ」

「あっ、はい! 失礼します」


挨拶を済ませるとさっさと入り口を出ていってしまう先生の後を、ぺこりと頭を下げて慌てて追いかけていった。

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