【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「先生、すみません、ご馳走さまでした」
エレベーターに乗り込んでから、支払いをしてもらったことのお礼を改めて口にする。
先生は大したことないと言わんばかりに、特になんのリアクションも返してこない。
「あの……もしかして、なんですが……魔除けって、あのエリアマネージャーの方にだったりします?」
先生が先に出ていき、その後を追ってお店を出ていく時、あのエリアマネージャーの女性の強烈な視線を受けた。
この女、私の先生と一緒に帰っていくなんて……と言わんばかりの目。
あれは完全に殺気に満ちていた。
先生への態度もあからさまだったけど、帰りがけの私への無言の圧力で確信に近いものを感じた。
「なんか、すごい目で見られたので、もしかしたら、と……」
「そうか、悪かったな」
「え、じゃあ、やっぱり……?」
先生の反応に思わず食い付く。
先生はエレベーターの天井に視線を泳がせ、どこか面倒くさそうに小さく息を吐き出した。
「効果抜群だったから、これからはひまりを連れてくることにした」
「へっ……え、あ、あの」
「ってことで、次回もよろしくな」
エレベーターが一階で扉を開き、先生は【開】ボタンを押しながら先に降りていってしまう。
今、名前で呼ばれた、よね……?
突然のことに驚いて動けず、降りそびれたエレベーターの扉が目の前で閉まっていくのを見つめていた。