【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
同じ歳というのが発覚してから『名前で呼んでもいいっすか?』と言われ、〝ひまさん〟と呼ばれるようになった。
それに習うように、私も〝ムロくん〟と呼ばせてもらっている。
タメというのもあるけど、人格的にムロくんは話しやすいフレンドリーな人なんだと思う。
「うーん……案外上手くやれてるかな? 先生に怒られることも今のところないし……」
そんな返答を返しながら、先生とのやりとりを頭に浮かべてみる。
あの猫カフェに同行してから、先生は私を下の名前で呼ぶようになった。
考えみれば、それまで名字で呼ばれていたわけでもなく、「おい」とかで済んでいた記憶だ。
とはいえ、いきなり〝ひまり〟と呼ばれて、初回は驚いてしまった。
だけど、先生はその後もなんの躊躇いもなく普通に名前で呼んでいる。
それがあまりにナチュラルで、初めからそう呼ばれていたかの錯覚を起こしてしまっている。
「いやぁ、初めはどういうこと?って思ってたけど……まぁ、あれだよな、うん」
「え、何?」
一人で納得するように、ムロくんはニヤニヤして頷いている。
モップをかける手を止めてジッと睨むと、受付の台から顔を上げて、また意味深にへらっと笑ってみせた。