【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
歳は私と同じか、もしくは少し上かもしれない。
胸辺りまであるサラサラのロングヘアーに、額の上にはサングラスを刺し、色白でしっかりメイクの美人だ。
登場から存在感が強烈で圧倒されてしまう。
ピンヒールの足元には白いふわふわの小さなプードルを連れていた。
患者さん……?
掃除道具をささっと回収し、裏に引っ込もうとした時、「こんにちは」と挨拶を返したムロくんに「蓮先生います?」と聞く女性の声が聞こえる。
思わず振り向くと、この間、私がうっかり寝てしまった中央のベンチソファーに脚を組んで座る姿が目に映った。
先生の個人的な知り合い……?
下の名前に先生をつけて〝蓮先生〟と呼ぶ患者さんは今のところ見たことがない。
常連の患者さんで、その上、かなり親しい……とか?
モップやら掃除用洗剤を手に診察室奥に入ると、いつもの黒いマグカップを手に、先生がケージの前に腰を落とし中の動物をじっと見ていた。
どうやら表に人が来ていることに気付いてないようだ。
「あの、先生。患者さんらしき方が……」
私の声に顔を上げ、先生は立ち上がる。
突っ立つ私の前までつかつかとやって来たと思えば、通りすがりに不意打ちで首根っこを掴んでいく。
「らしきってなんだよ」と、そばの台にカップを置いて表に出ていった。