【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
触れた指が離れていっても、肩にぎゅっと入った力が抜けない。
気付くと心拍も乱れていて、平常時には有り得ない動きで跳ねている。
あの猫カフェで顎の下をくすぐられたのを皮切りに、辻先生は事あるごとにスキンシップを図ってくる。
今みたいに、ツッコミがてら小突いていったり、頭をポンポンとされたり、なんてことない瞬間に触れられる。
そのたびに緊張して、鼓動が速まり、顔も熱くなってしまうから、先生が近くにいると最近はどうも落ち着かない。
はじめは『猫っぽい』なんて言われて触れられたけど、先生からしたら、私は動物的な立ち位置なのかもしれない。
猫カフェの猫たちや、ここに入院しているペットたちと同じ、わしゃわしゃつい触ってしまうような、そんな感じというか……。
気を取り直して、ケージの中のトイレシートの交換を始めると、出ていったばかりの先生がすぐに戻ってきた。
無言でさっき置いたカップを手にし、奥へと去っていく。
不思議に思ってそろりと表を覗きに行くと、ムロくんがさっきの女性のプードルを預かり、診察室で爪切りを始めていた。