【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「えっ……! お、追っかけ?」
「目的は蓮さん。それしかないね」
夕方、日差しが落ち着いてきたのを見計らい、ムロくんと犬たちの散歩に出かける。
今日は出かけられる子たちが三匹だったから、散歩は二人で一度で済みそうだ。
午前の診療が終わるギリギリの時間に突如現れた、先生を〝蓮先生〟と呼んだあの女性。
思い出してムロくんに『患者さんだったの?』と聞くと、『蓮さんを追っかけてるお嬢様だよ』と、驚く回答が返ってきた。
六渡寺莉子(ろくどうじりこ)さんという彼女は、TSUJI Animal Clinicの常連さんだという。
トリミングにまめに訪れる他、今日のようにちょくちょくペットの調子を診てほしいと病院を訪れるそうだ。
ムロくんの情報だと、この近くにあるらしい自宅は大豪邸で、代々会社経営をしている家系のご令嬢だという。
「やっぱり、先生、モテるんだね……」
「え、やっぱりって?」
「ああいや、この間、猫カフェに同行した時も、そこの社員の人が先生お目当てみたいな空気出してて……」
帰り際の、あの強烈な視線を思い出しながら答える。
あんな視線を送られたのは、生まれて此の方初めてのことだった。
ムロくんは「さすが蓮さん」と、どこか楽しげに笑う。
「でも、蓮さん的には迷惑みたいだけどね、今日の六渡寺さんは特に」