【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛
「すごい嬉しそうですね。やっぱり、自由に走れるのって楽しいんだろうな……」
敷地内は自然な野草が生い茂り、中央近くにソメイヨシノの大木がどんと聳えている。
今は青々と葉がいっぱいだけれど、春頃は見事な花見ができることが想像できた。
その桜の木の近くにしゃがみ込み、犬たちが駆ける姿を眺める。
先生も私の横に立ち、犬たちを見つめていた。
「あっ……ダンゴ虫」
ふと視線を自分の足元に落とすと、自分の履いている白いキャンバススニーカーのつま先の上辺りに、ダンゴ虫が悠然と歩いている。
そっとその背中に触れて丸めてやろうとしたけど、なぜかダンゴ虫は丸くならない。
「それはダンゴ虫じゃない、ワラジ虫だ」
首を傾げそうになった時、横から先生の声が降ってきた。
「ワラジ虫……ですか?」
聞いたことはあるけど、どんな虫かはわからない。
ダンゴ虫に似てるということ?
「ぱっと見はよく似てるが、並べてみるとはっきりと違いがわかる」
そう言った先生は桜の木の根元に行き、腰を落として何やら探し始める。
そしてすぐに私の目の前へとしゃがみ込んだ。