【医者恋シリーズ2】 冷徹ドクターのイジワルな庇護愛


辻先生の辛く苦しい胸中の告白に、私の時は止まっていた。

先生の悲しい記憶が流れ込んでくるようで、心臓が押し潰されていく。

鉄格子の奥に注がれる瞳は、やるせなさと切なさで揺れていた。


「知ってるか、殺処分の方法」

「……窒息死、させるんですよね」

「処分室という狭い場所に動物たちを押し込んで、一酸化炭素を注入する。でも、まだ小さな犬猫の場合、呼吸が浅いから死に切れない場合があるんだ。そういう時……俺は麻酔を打って処分をしてた。シリンダーの目盛りが減ってくと、手の中で動かなくなるんだ、小さな身体が」


動物が好きで、自分の知識で助けたり、寄り添いたいと思って獣医師を目指した先生。

だけど、人間の身勝手な行動とエゴで、動物たちを殺めなくてはならない現実を目の当たりにした。自ら手を、下して……。

こんなに辛いことはきっとない。


「だから、だったらそんな動物たちを少しでも減らすために、自分には何ができるかって考えた。変えようと動かないと、何も変わらないって」

「変えようと、動く……?」

「自分の病院を持ってからも、殺処分ゼロを目指す動きに賛同してる。譲渡会を行うここや、里親を探すボランティアと連携して活動してる。それでも、まだゼロには遠い現実があるけどな」

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