あなたへ
誰だろうと思い顔を上げると。
「………」
無言でこちらを見下ろしているふとんくんが居た。
バチッと目線が会う。
「君、ありがとう。怪我本当にない?」
どうやら心配して戻ってきてくれたらしい。
「えっと……大丈夫です!」
精一杯の笑顔で答える。
「そっか、良かった。…間違いだったら恥ずかしいんだけど…」
そう言い間を開けるふとんくん。
私は続きの言葉を待った。
相当気まずいのか、しゃがんでガラスを集めながら言葉を繋げる。
「僕達を助けてくれたん…だよね…?」
そこまで言うとカクンと首を傾げこちらを見る。
「…はい、困ってたみたいなので…余計なお世話だったらごめんなさい」
頑張ってあくまでも自分はファンではない事を偽る。
困ってたから助ける。
赤の他人にそこまで出来るような行動力は残念ながら持ち合わせていない。
困ってた相手がふとんくんだったからだ。
「いや、助かったよ。ありがとう」
そう言いながらふわっと笑ったふとんくんの表情に、嘘はなかった。
スっと立ち上がり席へと戻るふとんくん。
私はその後ろ姿を見ていた。
床に落ちてるガラスは、綺麗に集められていた。