あなたへ


「お母さーん、今日のご飯なに?」

「今日のご飯はオムライスよ。さっさと食べちゃって」

「おぉ!美味しそう!!ありがとう!いただきまーす」


私は椅子に座るなりもぐもぐと食べ始める。


早く食べて動画観よ…!


そう思いながら食べていると


「そういえばあんた、もうすぐ誕生日よね」


唐突にお母さんがそう話す。


「うん、ちょうど来週で誕生日」

「あんたの好きな動画の配信者??確かその日ライブある〜とかなんとか言ってなかった?結局行くの?」

「…それがさ…聞いてよ……!」


お母さんがその話題を出した瞬間、私は顔の色を変えてバンッと机を叩き語り出す。


「友達にも手伝ってもらってチケット応募したのに…全部当たらなくて…初めてのライブが私の誕生日!っていう思い出を作りたかったのに……無念…」


ノンブレスで語り終えると同時にご飯のオムライスを避ける形で机に額をぶつける。


「……」


そんな私を見てただただお母さんは無言。


チラッとお母さんの方に視線を送ると、スタスタと歩き出し棚の引き出しを開ける。


そして、取り出したのは


「ああああ!?!?それ私が当てたくて仕方のなかったチケットじゃない!?」

「そうよ、一応お母さんも応募してたの。誕生日プレゼントにしようと思って。これで楽しんでらっしゃい」


そう言いお母さんは机の上にチケットの入った封筒を置いた。


どうやらお母さんは当てていたらしい。


恐るべし…無欲。


「ほんとう…??えっ、ほんとにこれライブの………??」

「そうよ、幕無メッセでやるやつでしょ?」

「そう…!ほんとにほんとにライブのチケットだ………!!!」


少し早めの誕生日プレゼントは、素敵なものでした。
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