あなたへ

ライブに行ってから2週間ほど時間が経った。


あれからというもの、いつもと変わりない日常を送っている。


ある1つを除いては。


「瑠梨〜これからどっか遊びに行こうよ」


学校が終わり、帰りの支度をしている時、美結が話しかけてきた。


「遊びに行きたいのは山々なんだけど…」

「お店の手伝い?」

「そう…」

「前までは時々だったのに今は週に1回のペースだよね」

「唐突に今日手伝い来てって言われるの…」


正直いつも乗り気ではない。


「まじか。じゃあ明日どっか行こう?」

「うん…!なんか奢る…!」

「ははっ、ありがと。それじゃまたね〜」

「うん!ばいばい!」


美結と別れてから、自宅へと向かう。


お母さんがお手伝いを頼む日は大抵、固定のお客様がいる時。


予想は大体ついている。


「気が重い…」


裏口からではなく、お店のドアから入る。


チリンチリーン


「いらっしゃいませー。…あ、瑠梨ちゃん。今日も手伝い来てくれたんだね」


店員さんがニコニコしながら話しかける。


「今日も来てるよ、あのお客様」


そして、チラッとカウンター席を見る。


「やっと来た!瑠梨!早く着替えてこれ運んで!」


厨房からお母さんの声が響く。


その声でカウンターに座っていたお客様が振り返る。


「瑠梨ちゃん」

「…どうも」


引きつった笑顔で返事をする。


そう、そのお客様とは


ふとんくんである。


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